「生活保護」という言葉は知っていても、
具体的な実態については知らない人も多いでしょう。
「生活保護を受けるようになったら終わりだ」
などといった悪いイメージや、
厳しい受給制限の噂ばかりが先行して、
意外なほど、その実体は知られていません。
生活保護は、現に生活に困っている人であれば誰でも権利として受けられる制度です。
それは、たとえ働ける年齢層の人であっても、住まいのない人であっても同じこと。
生活保護のおかげで、誰もが安心して暮らしていくことができるため、
最後のセーフティネットと呼ばれています。
そもそも生活保護とは、年金の受給額が少ない場合や収入が少ない場合に、
国で定める最低生活費を下回る場合に、足りない部分について保証する制度です。
つまり、完全にお金が無くなってから受ける制度ではありません。
しかし、生活保護の手続きの面倒くささや、生活保護を受けることへの抵抗感から、
受けていない人が多いのです。
もちろん、低所得であっても、「所得があるから生活保護は受けられない」
と思っている人も大勢います。
現行の生活保護は、「働いていて収入はあるけれど、生活が苦しい」
という人達を補助するような制度は全く機能していないと言えます。
本当は生活保護が必要な状態なのに保護を受けていない人、
もしくは、生活保護システムの存在そのものを知らない人も多く、
最低生活費を下回る世帯の約1割しか保護を受けていないと言われています。
しかし、もしもこうした状況に陥っても、生活保護が認定されることは、かなり難しい状況です。
まず、認定は世帯が単位になるため、
世帯全体の収入を合計して、最低生活費を上回る場合は受給することができません。
多額の借金があるケースや、夫が家にお金を入れないなどの理由で
生活できない場合もNGとなります。
働ける人は働き、資産は処分し、身内に援助を求め、
利用できる制度は利用しても、なお生活のめどが立たない時、
はじめて福祉事務所に相談に行くことになるのです。
また、生活保護の認定を難しくしている理由には、この制度の矛盾があります。
生活保護は国民のだれもが受けられる権利でありながら、この不景気なご時世、
要保護者を全員保護したら、国の財政はあっという間に破綻してしまうからです。
だから国もあえて生活保護を積極的には広報しないのです。