これは私が以前に社会福祉士養成講座の実習で、
社会福祉協議会に研修に行った時の事例です。
生活保護対象者は50代の男性で、
生まれ持っての知的障害をわずらっておられる独身の方でした。
生活保護を受けるようになったきっかけは、
もともとこの男性は離婚された母親と2人で暮らしていたのですが、
母親が亡くなって、仕事も今まで何回か行ってみたものの、どれも長続きすることなく、
仕事ができる状態ではないと判断され生活保護を受けるようになりました。
彼自身、お金を管理する事が難しいということもあって、
社会福祉協議会の社会福祉士が仲介に入り管理の元、
定期的に必要な分だけお金をもらい生活をされていました。
彼自身は、日頃の生活に何も不満を抱えておらず、
与えられるお金で必要最小限の生活をされていました。
ですので、生活保護受給分のいくらかを貯金に回す事ができていました。
普段は、一切不満を口にされることはないのですが、男性には一つだけ楽しみがありました。
男性はお祭りが大好きで、各地のお祭りを1人旅するのが唯一の楽しみでした。
ですので、社会福祉士の管理の元、貯金できていたお金を利用して、
年に1回各地のお祭りに1人旅をされていました。
南は九州の博多どんたくから、北は青森のねぶた祭りまで様々な所に行かれていました。
旅に出られる期間は平均すると4日から5日で、
現地ではたくさんの写真を取って帰ってこられるそうです。
その写真をもとに、絵を描いたり、神輿をまねて作ったりされるそうです。
ですので、自宅にはたくさんの作品が飾ってありました。
出来栄えもほんとに上手で、本物そっくりに作ってありました。
材料は全て100円均一から買ってくるそうで、
一つの作品を作るのに平均1ヶ月くらい掛かるそうでした。
男性は自分の作品を私に見せてくれて、写真を見ながら、
お祭りに行った時の話を楽しそうにして下さいました。
現在、男性は生活保護を自給していて、社会福祉士介入の元生活されているのですが、
担当の社会福祉士の方から聞いた今後の目標は、
1日数時間でもいいので、少しずつ仕事を行うことができるようになることを短期の目標として、
最終的には自立した生活に持っていくことを目標に
今後支援計画を立てていきたいと言われていました。
また、男性には、今までの旅で作成した作品がたくさんあるので、
この作品を利用して、高齢者や障害者の施設で展示会を行って
お年寄りの方たちに楽しんでもらう機会を作りたいと言う考えもあるみたいでした。
生活保護自給者だから何もできないということはなく、
できることをできる範囲で行って、少しずつ自立に向けて、
支援していくのが周りの者の務めであることを学びました。